2021.11.15
(更新日:2023年5月9日)
今回は泣く子も黙る国内鉄道模型界の王様『天賞堂』をご紹介させて頂きます。
天賞堂の重厚感のある黒光りした蒸気機関車は資産と言っても過言ではありません!
そんな天賞堂製品の魅力を存分にお伝えいたします。
目次
天賞堂は、1879年(明治12年)に中央区銀座で創業した時計、貴金属、鉄道模型の製造・販売を手がける会社です。
世界的に名が知られる日本企業のひとつで、国外では「Tenshodo」と表記されることがあります。
鉄道模型の制作は、2019年に70周年を迎えました。日本を代表する老舗模型店といって良いでしょう。
しかし、意外にも天賞堂の鉄道模型の歴史は「個人の趣味」から始まっています。
元々は時計の製造を手がけていた天賞堂の空き店舗で、1949年に創立者新本秀雄が趣味の鉄道模型を小規模な商いとしてスタートさせました。
当初は進駐軍を顧客としていたことから、銀座の本店に作られた「第一次オメガ・セントラル鉄道」も、背景や建物は米国様式でした。
1951年から本格的な生産体制を取るようになり、1954年からは米国の鉄道輸入会社であるパシフィック・ファースト・メール経由で輸出するほど規模が拡大しました。
天賞堂の鉄道模型は、ジュエリーを作る時に用いられるロストワックスの技術を活かしたブラスモデル(真鍮)が主流でしたが、ゴムの一種であるエボナイト樹脂成形の車両にも早い段階から着手し、製造するなど意欲的な面が見られます。
現在は、真鍮製車両のほか、プラスチック製、ダイキャスト製などさまざまな車両をリリースしており、一部は韓国でも生産するなど事業規模を広げています。
社長の趣味から出発した鉄道模型製造が、進駐軍を相手とした事業として軌道に乗り、世界にその名を知られるクオリティを維持し続けて今に至る、そのストーリーにも人々は魅了されているのかもしれません。
天賞堂の鉄道模型は、宝飾業を営む社長の趣味の延長からスタートしていて、当初は進駐軍相手の1台〜複数台の受注生産で製造されていました。
一個人の「好き」から始まった事業ゆえ、天賞堂の模型は細部まで実車の様相がよく再現されて精巧に作られているのです。
一般的に、受注生産体制から大量生産へ舵を切るとクオリティが落ちてしまうケースもありますが、天賞堂は大量生産体制になってからも現代に至るまでクオリティを落とすことなく鉄道模型を提供し続けています。
そして、天賞堂は日本で初めて交直両用電気機関車を製造・販売したメーカーでもあります。
ミニチュアになった「ED46形」の実車は日立製作所で製造されましたが、この実車も機関車第1,000号という節目の車両でもあります。
天賞堂はまた、天皇皇后が移動するために運行されるお召し列車なども精巧なミニチュアで再現しています。
さらに近年では、OEM(他社ブランド製品の製造、Original Equipment Manufacture)による共同開発、プラスチック製、ダイキャスト製など多様な商品展開を行なっていることも特徴です。
天賞堂最大の特徴であり魅力は、ロストワックス技術を用いた真鍮製の鉄道模型です。
ロストワックス鋳造法はワックス(ロウ)で原型を作ってからそれを砂や石膏で囲んで鋳型を作り、ワックスを取り除いた鋳型に流体金属を流し込んで複雑な造形や模様を立体化する技法で、宝飾品だけでなくコインの鋳造法としても使われている技術です。
これを鉄道模型づくりに活用することで、世界に誇るクオリティの鉄道模型が作られているのです。
天賞堂は、自社の鉄道模型を年代別に網羅したサイトを運営しており、時代ごとの車両やモデルについて詳細を確認することができます。
「年代別製品一覧」では、年代別だけでなく1年ごとに販売された模型がカテゴライズされていて、どの車両がいつ発売されたのかが一目で分かるようになっています。
自社製品を置いている取扱店もリスト化されていて、商品を手に入れたい時に探しやすいのが特徴です。
世界に通じるクオリティの高い製品であることはもちろんですが、国内で製品や情報が入手しやすいメーカーであるという点も、ファンを惹きつける理由のひとつといえるでしょう。
「模型としてやれることをすべて注ぎ込む」という方針に偽りのないラインナップも、多くの人から愛好される理由です。
天賞堂は現在オリジナル製品として、真鍮製、ダイキャスト製、プラスチック製の鉄道模型を販売しており、ほかに廉価版として「T-Evolutionシリーズ」をリリースしています。
車両本体以外では、オリジナルパーツや鉄道車両をモチーフにしたネクタイやベルト、タイクリップ、オーダーメイドのジオラマなども手がけていて、まさに鉄道にまつわることを高いクオリティで追求し続けているメーカーといえます。
豊富なラインナップの中で、鉄道模型のコアなファンから支持されているのは真鍮製の鉄道模型です。
ですが、高価な製品だけでなく普及製品もクオリティを落とすことなく製造・販売しているのが魅力。
高いお金をかけなくても、ジャパンメイドの高いクオリティを楽しめるという親しみやすさが年齢や性別を超えて愛される所以でしょう。
鉄道模型としての伝説をもちながらも、果敢に多様な素材での製品作りに取り組む、そんな姿勢はファンを惹きつけてやみません。