2026.11.07
(更新日:2026年11月5日)
「大分行」の文字の下に、もともと彫られていた「臼杵(うすき)」の文字が、今もうっすら浮かび上がっている。
そんな、行き先の移り変わりを1枚の板に残したサボを、千葉県での出張買取でお譲りいただきました。
千葉県にお住まいの方の、ご自身のコレクションの整理でした。
伺ったお宅には、今回ご紹介するサボのほかにも、歴史のある鉄道部品がそろっていました。
お話を伺いながら拝見させていただき、私自身も多くのことを勉強させていただいた、貴重な時間でした。
中でも心をつかまれたのが、昭和16年の車両銘板や、大正13年の日本車輌の車両銘板です。
文字は右から左へ読む「右読み」で、「車輌」「會社」といった旧字体(昔の漢字の形)で刻まれていました。
ここまで古い品物になると、鉄道車両の部品というだけでなく、当時の日本のものづくりを伝える工業品そのものだと感じます。
鉄道としての価値はもちろん、日本の近代の歴史を今に伝える品物としての価値も感じる。
そんなコレクションでした。
サボは、列車の横に取り付けて、行き先などを知らせるための板です。
サイドボード、またはサインボードの略と言われています。
今回のサボは、上に2つの穴があいた「吊り下げ式」で、車両の金具に引っかけて使われていたものです。
表と裏で「大分行」と「門司港行」が書かれた、1枚で2つの行き先を表すサボです。


左下には、丸で囲まれた「モジ」の文字も入っています。
文字が、板そのものに彫られて浮き出ているサボです。
今回のサボは、楷書体(かいしょたい)と呼ばれる、筆で書いたような、きちんとした形の文字で作られています。
楷書体の彫り文字のサボは、昭和の初めから中ごろにかけて使われていたものと思われます。


「大分行」の文字の下に、もともとの行き先「臼杵行」が残っていることです。
一見すると、普通の「大分行」のサボに見えます。
ですが、よく見てみると、下に別の文字が彫られていたことが分かります。
もともとの行き先は臼杵行きで、当時、何らかの事情で、塗装を塗り直して大分行きに変えられたのだと思われます。
彫り文字のサボなので、塗装を変えても、もとの文字の凹凸までは消えません。
そのため、もともとの行き先のローマ字が、今もうっすらと浮き出ています。
この、2つの時代が1枚の板に重なっているところが、なんとも言えない味わいを生んでいます。
1枚のサボから、当時の鉄道の様子を想像できるところです。
なぜ臼杵行きが大分行きに変えられたのか。
どんな列車に付けられて、どんな人を乗せて走っていたのか。
サボを集める立場から見ると、そうしたことを想像するのも、サボ集めの大きな楽しみの1つです。
今回のサボも、銘板と同じように、使われてきた時間そのものが刻まれた、とても魅力的な1枚だと感じました。
・千葉県のお客様のコレクション整理で、彫り文字の吊り下げ式サボをお譲りいただいた。
・「大分行」の下に、もともとの行き先「臼杵行」の文字が残っている。
・旧字体の古い銘板やサボは、鉄道の文化とともに日本の近代の歴史を伝える品物でもある。
Q. 塗り直された跡があるサボでも大丈夫ですか?
A. はい。今回のように、塗り直しの跡そのものが、そのサボの歴史を伝える見どころになることもあります。
Q. 大正や昭和の初めごろの、古い銘板も相談できますか?
A. はい。今回のお客様のように、サボや古い車両の銘板など、いろいろな鉄道部品をまとめてお譲りいただくこともあります。